内容説明
山あいの集落にとつぜん現れたみつばちの大群に人々がおどろき逃げまどう中、村の少女・チヨが行方不明となった。
3日後、ひょっこりと姿をあらわしたチヨのかたわらには、どこで出会ったのか三平というぶあいそうな少年がいた。
どこから来たのか話そうとしない三平は村中のきらわれ者になるが、チヨはなぜか三平に寄り添いつづける─。(「風のように」)
著者・ちばてつやが1969年~1977年に発表した短編作品6編を収録。表題作のほかSFテイストの異色作「あるインクの話」、敗戦後の満州での体験を描いた自伝「屋根うらの絵本かき」など、時代を超えて現代の読者の胸を打つけっさく短編を一挙収録します。
もくじ
『風のように』『あるインクの話』『え~ん』『屋根うらの絵本かき』『茂助じい』『あるあしかの話』
ちばてつや プロフィール
1939年東京都生まれ。幼少期を旧満州・奉天(現在の中国・遼寧省瀋陽)で過ごす。
1956年漫画家としてデビュー。
代表作に「1・2・3と4・5・ロク」「あしたのジョー」(原作・高森朝雄)「おれは鉄兵」「のたり松太郎」ほか多数ある。
2022年、日本芸術院にマンガの分野では初めての会員に選出される。
ちばてつや先生コメント
短編集「風のように」に寄せて
この本に収められている短編を書いたときは「あしたのジョー」や「のたり松太郎」という作品の連載中で本当に忙しくて。
今思うとよくこんな作品を描く時間があったなぁ、とビックリです。
ワシはふだん自分の作品を読み返すことがないんだけれど、こうして単行本になってあらためて読み返してみると、我々人間が地球上で一緒に暮らしている動物や植物たちのことを粗末に扱っていることに、自分自身が結構心を痛めていたんだなぁ、と気付かされました。
さて、自分がマンガを描くようになったきっかけを描いた「屋根うらの絵本かき」は、戦争が終わった時に日本へ逃げ帰る道中の物語です。
あれから80年ちかく経ってもまだ地球上のおバカ人間たちは、お互い殺し合うことを止められずにいます。
ウクライナ侵攻だけでなく世界各地の紛争がいまだに繰り返されているこの時代に、こういう短編集を出してくださって本当にありがとう。
若い・・・あるいは幼ない読者の皆さんがこの短編集を読んで、残念ながら良い面ばかりではない人間社会の愚かさだったり、地球上の全ての大切な「いのち」のことを考える機会になってくれたら、こんなに嬉しいことはありません。
ちばてつや
収録作品
風のように
あるインクの話
え~ん
屋根うらの絵本かき
茂助じい
あるあしかの話